肌の美肌菌が天然のクリームを作る
私たちの肌には、全身で1兆個、顔に限れば200億個もの常在菌（細菌）が存在する肌フローラがあります。
腸内フローラ（腸内細菌叢）と同様に、肌フローラの常在菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分けられます。
肌の善玉菌の代表は、美肌菌ともいふべき表皮ブドウ球菌です。表皮ブドウ球菌は、肌の表面から角質層にかけて生息し、皮脂や汗を分解してグリセリンや脂肪酸を作り、肌の表面に天然のクリームとも言われる脂肪膜を作ります。
このおかげで、肌は弱酸性に保たれて保湿され、紫外線や雑菌、病原体から守られているのです。
このような健康な肌には、悪玉菌の黄色ブドウ球菌はほとんど存在しません。黄色ブドウ球菌は、肌荒れアトピー性皮膚炎の原因菌で、怪我やアルカリ性に傾いた皮膚で増殖し炎症を起こします。
日和見菌のアクネ菌は、ニキビの原因になる一方で、皮膚を分解し、天然のクリームの材料になる脂肪酸とグリセリンを作ります。
肌フローラの理想的なバランスは、善玉菌プラス日和見菌対悪玉菌が10対0で、善玉菌が優勢ならば悪玉菌を退治できます。
しかし、悪玉菌は繁殖力が強いために、乾燥などのちょっとしたきっかけで増殖し、肌の赤みやかゆみ、テカリ、吹き出物、においなどのトラブルを引き起こします。
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乳酸が肌のターンオーバーを促す
そこで、悪玉菌を減らし善玉菌を増やすために効果的な働きをするのが乳酸菌です。腸内フローラを美しく整えるのに乳酸菌を多く含むヨーグルトを食べるのが良いという話は、ご存知かと思います。
それと同じように、乳酸菌は、肌に直接つけても肌フローラを整えるのに優れた効果を発揮するのです。
乳酸菌は、肌フローラに住み着くことはありませんが、乳酸菌が作り出す乳酸は、肌を弱酸性に保ち、肌の善玉菌である表皮ブドウ球菌が住みやすい環境を作ります。
すると、肌フローラが美しく整えられて、雑菌や悪玉菌の繁殖を抑えるため、ニキビの予防・改善につながります。
また、乳酸には、古い角質層を柔らかくして取り除き、肌の新陳代謝（ターンオーバー）を促すピーリング効果もあります。
ピーリングの「ピール」とは「皮を剥く」という意味ですが、乳酸によるピーリングは薬剤を使うよりも肌に刺激が少ないためより安全です。肌のざらつきが取れて、すべすべの肌になる効果が期待できます。
また、メラニン色素が作られることによって生じるシミ・くすみなどの色素沈着も、肌のターンオーバーが正常になれば、メラニンの排出が促されるので、改善されていきます。さらに乳酸には、肌の水分量を増やす保湿効果、コラーゲンの生成を促す効果もあります。
コラーゲンの生成が増えれば、しわや毛穴のたるみ、ニキビの跡を引き締められて、肌のキメが整えられます。
その上乳酸には、シミの原因となる酸化酵素のチロシナーゼの働きを抑制する作用もあり、美白効果が期待できるのです。
なお、乳酸菌の肌ケアにヨーグルトを使えば、豊富に含まれるビタミンB群が、肌のターンオーバーをさらに促進してくれます。
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パックの後は入念な保湿ケアをする
こうした乳酸菌の肌への優れた効果が注目されて、最近では乳酸菌を多く含むヨーグルトでパックをする美容法が人気です。
ただし、ヨーグルトパックで古い角質を取り除くと、一時的に肌のバリア機能を低下させることになるので、ヨーグルトパックを行ったとは、念入りに保湿ケアを行ってください。極度の敏感肌や乾燥肌の人は、間をあけて行うなど注意する必要があります。
また、ヨーグルトに使われる乳酸菌は、様々な種類があるので、食べる場合も肌に付ける場合も、色々試して、自分に合ったヨーグルトを探してみてください。
また、最近は乳酸菌入りの化粧品も多く市販されているので、ヨーグルトパックが面倒な人は、試してみてもいいでしょう。
ヨーグルトパックによる乳酸菌の肌ケアに加えて、肌を健康に保つためには、日頃から肌フローラの善玉菌を増やす心がけが大切です。
例えば、食事や睡眠などの生活習慣を規則正しく整える、適度な運動や入浴で善玉菌のエサとなる汗をよくかく、体を冷やさない、ストレスや紫外線を避ける、などが挙げられます。
特に気を付けなければならないのは、肌を清潔に保とうとして、過度の洗顔を行ってしまうことです。
すると、悪玉菌だけでなく、善玉菌や肌の脂肪膜まで洗い流されてしまいます。よって、洗顔料はしっかり泡立てて、肌の上をやさしく転がすように軽く洗い、水で洗い流す時も、肌をゴシゴシ刺激しないように注意してください。