ミエリンを強化して認知症改善

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世界の脳神経学者が注目する「ミエリン」

脳は、100億個を超える神経細胞の緻密なネットワークによって構成されています。具体的には、1つの神経細胞の樹状突起が、ほかの神経細胞の神経線維(軸索)の末端でつながり(結合部をシナプスという)、様々な情報のやり取りが行われるのです。

こうした神経細胞間の情報伝達がスムーズにできるように、神経線維の周囲は鞘のような脂肪の白い膜で包まれています。これを「ミエリン」というのです(髄鞘とも言う)

ミエリンの役割は、大きく分けて 2つ考えられるでしょう。一つは、電気ケーブルを覆っているゴムと同じように外部からの電気干渉を遮断し、効率的に情報を伝達する絶縁体(電気を流さない物質)としての役割です。

もう一つは、情報伝達のスピードを加速する役割です。神経線維は、数十マイクロメートルおきにミエリンで包まれており、その鞘と鞘の間には「ランビエ絞輪」というミエリンのない部分があります。

ミエリンは、脳の情報の電気信号が絞輪から絞輪へとジャンプするように伝える性質(専門的には跳躍伝導という)をもたらすのです。

ちなみに、ミエリンで包まれた神経線維が情報の電気信号を伝える速度は、ミエリンで包まれていない場合よりも50倍以上も速くなることが分かっています。

このように、脳の複雑なネットワークで膨大な量の情報がスムーズに行き来するために、ミエリンは重要な働きをしているのです。

実は最近まで、ミエリンに包まれている神経線維は、さほど重視されていませんでした。記憶を保持するのは、核がある細胞体であり、神経線維は情報を伝える連結部と考えられてきたのです。

それが、最新の研究でミエリンが発達している人は記憶力・認知力に優れていることが判明し、脳神経科学の世界で大いに注目され始めています。

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ミエリンは脳の発達と深く関わる

そもそも、ミエリンは、出生時には脳の一部にしか存在していません。これは、神経細胞のネットワークが未熟であることの証です。

神経線維の末端にあるシナプスの数は3~4歳でピークを迎え、その後は多少減ってしまうものの、20歳で安定期に入り、60歳で再び減少に転じます。

小さな子供が物覚えがいいのは、神経細胞の数が多く、脳の各部位でミエリンが増えていくからでしょう。

幼児期から成人になるまでの間に脳のネットワークが発達し、ミエリンが次々と増強されることにより、多くのことを学習し、様々な能力を発揮できるのです。

ミエリンの発達は、脳の後頭葉から始まり、年齢とともに高度で複雑な思考を行う前頭葉へと進むことが明らかになっています。

このミエリンの発達具合は、MRI(磁気共鳴断層撮影)による脳の断層画像から確認できます。神経線維が集まっている部分は白質と言って画像に白く映るため、その部分でミエリンが発達しているとわかるのです。

例えば、プロのピアニストと一般人の脳の断層画像を比べると、プロのピアニストにだけ、脳の特定の部分に白質が確認できます。

これは、長年にわたって指を動かしたり、聴覚・視覚をフルに働かせたりして、ピアノの演奏に必要な脳の領域でミエリンが発達したことを示しています。

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脳の情報伝達を左右するミエリン

近年、ミエリンが注目されているのは、神経細胞の脱髄(ミエリンが壊れて失われること)によって、様々な障害が起こると考えられるようになったからです。

脱髄した脳の部位では、跳躍伝導が機能しなくなるため、電気信号のやりとりによる情報伝達が極端に遅くなります。すると、感覚障害・視力障害・歩行障害・排尿障害を招く重大原因となるのです。

脱髄に至らないまでも、ミエリンの衰えは、記憶力・認知力の低下を招くと推察されています。

ミエリンが衰えて脳の情報伝達が遅くなれば、物忘れが多発したり、物事を正しく認識できなくなったりすることは当然あり得るでしょう。ですから、脳の健康を保つために、ミエリンを強化することがとても大切なのです。

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コメント

  1. イケダミハル より:

    MS です分からないことだらけです。でも…
    むかしから、できることをやる。MSという病気を知ってからは無理しすぎず、できることをやり、先へ進んでいます。

    どうぞよろしく。

    池田