タマネギの特効成分ケルセチンがメタボやアルツハイマーを抑えると新研究で判明。酢漬けなら安定して補える。
内臓脂肪の増加をケルセチンが抑制
酢タマネギが多くの人々から支持されているのは、健康に有益な「ファイトケミカル(植物に含まれる天然の化学物質)」が、タマネギに豊富だからでしょう。とりわけ注目されているのが、タマネギの黄色の色素の「ケルセチン」です。
ケルセチンには、強力な抗酸化作用(酸化を防ぐ作用)があり、体内で増えすぎた活性酸素(攻撃力の強い悪玉の酸素)の害を退け、病気や老化を防ぐと考えられています。近年、公的な研究機関や大学が、ケルセチンについての実験や試験を行っています。
第一は、ケルセチンが高血圧・糖尿病などの生活習慣病の原因となる、メタボリックシンドローム(代謝症候群。以下メタボ)の予防・改善に役立つ事を調べた実験です。
公的研究機関の農研機構などの共同研究チームはマウス(実験用のネズミ)を3群に分け、それぞれ違う飼料を20週間与える実験を行いました。
具体的には、A群に標準の飼料、B群に脂肪やショ糖、などを含む高カロリーの西洋食型の飼料、C群にタマネギのケルセチン0.05%を配合した西洋食型の飼料を与え、食べる前後の体重・内臓脂肪の変化を測定し、血液検査を行ったのです。
その結果、西洋食型の飼料を与えたB群とC群は、標準食を与えたA群に比べて体重・内臓脂肪が増え、血圧・血糖値などの数値も上昇していました。高カロリーの西洋食をとると、マウスにもメタボの兆候が現れるのです。
ただし、ケルセチンをを配合したC群はB群に比べて体重・内臓脂肪の増加が抑えられ、血液検査の全ての項目が低く抑えられていたのです。
これには、体内の脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン(善玉と悪玉がある)」という物質が関わっていると考えられます。
内臓脂肪が増えると悪玉アディポサイトカインの分泌量が増えて、血糖値や血圧が上がったり、血栓(血液の塊)ができやすくなったりします。
一方、内臓脂肪が減ると、善玉アディポサイトカインの分泌量が増えて、インスリン(血糖値を調節するホルモン)の効きが良くなったり、高めの血圧が下がったりする効果が得られるのです。
実際に、ケルセチンを含む飼料を与えたC群では、善玉アディポサイトカインの血中濃度がB群よりも高かったのです。
これはマウス実験の結果ですが、今後、ヒトへの研究が進めば、メタボ解消の手がかりとなるはずです。
【スポンサードリンク】
5人全員で認知機能の向上を確認できた
第二は、ケルセチンが認知力を高め、アルツハイマー病に好影響を与える可能性について調べた試験です。
北海道情報大学の研究チームは、軽度認知障害の60人(65~84歳)を二群に分けて試験を行いました。
一方の群には、ケルセチンの多いタマネギ(含有量50mg以上)を24週間食べてもらい、もう一方の群には、ケルセチンをほぼ含まないタマネギを同期間食べてもらって、その前後に認知機能検査(ミニメンタルステート検査)を実施したのです。
すると、両群の全体では点数の変化に大きな違いは見られなかったのですが、年齢の若い層に限って見てみると、ケルセチンの多いタマネギを食べた群のほうが点数が高くなっていて、認知機能の改善が認められたのです。
岐阜大学では、早期のアルツハイマー病の人を対象に試験を行っています。この試験では、5人の対象者にタマネギの粉末(ケルセチン含有量約80mg)を4週間摂取してもらい、その前後に認知症の簡易検査(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)を受けてもらいました。
その結果、ケルセチンの粉末を摂取した後の簡易検査では、単語や品物の名称を思い起こす項目(想起評価項目)で、5人全員の点数が上がっていたのです。
メタボや認知機能の衰えを防いでくれるタマネギのケルセチンを補うなら、酢漬けにした酢タマネギが一番でしょう。そのまま食べても美味しく、毎日の食事メニューに活用すれば、飽きることなく継続してタマネギのケルセチンを摂取できます。