嗅覚の衰えは認知症低下の初期症状、香りを嗅げば物忘れ予防

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アルツハイマー型では嗅覚の衰えを伴う

香りを感じにくくなったことを自覚している人はいないでしょうか。カゼや鼻炎などで、嗅覚が鈍くなることは誰でもありますが、特にそうした症状がない場合には、認知症の前触れである可能性があります。

実は、アルツハイマー型認知症(以下、アルツハイマー病)の発症サインに、香りを嗅ぎ分ける能力の衰えがあることが、米国ラッシュ大学医療センターの研究によって明らかになりました。

調査の方法は、598名の地域住民を対象に、12種類の香りをかいでもらう嗅覚検査を行った後、5年間の追跡調査を行いました。

この間に、認知症と診断された人は177名で、その人たちのデータを調べたところ、嗅覚機能が低かった人ほど、認知力が低下しやすい傾向にあることがわかりました。

さらに、12種類の香りの中で8種類しか正解できなかった人は、11種類を嗅ぎ分けることができた人と比べ、認知症を発症する率が5割も高かったというのです。

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香りは脳に直接届き自律神経を刺激する

では、認知機能と嗅覚は、なぜそのように密接に関わっているのでしょうか。香りとは、におい分子が鼻腔内の粘膜に付着し、その刺激によって電気信号が発生して脳へと伝達されます。

そして、五感の中で嗅覚の情報だけは、脳の中枢部に直接伝わります。視覚や聴覚のように視床を経由しないために、伝達経路が短く集約して情報が届くのです。つまり、嗅覚情報は、他の感覚情報に比べて、速く強い刺激が脳に届くということです。

しかも、香りの情報がダイレクトに届く、大脳辺縁系などの脳の中枢部には、記憶や感情を管理する海馬や扁桃体のほかに、自律神経(意志とは無関係に血管や内臓の働きを支配する神経)も通っています。

香りの情報によって自立神経が刺激されると、交感神経(心身の働きを活発にする神経)にスイッチが入って脳に伝わります。

その結果、神経細胞に新鮮な酸素と栄養が届けられるようになり、脳の神経細胞が養われることで活性化するのでしょう。

さらに、香りの情報は、海馬を通じて大脳皮質の所々に分散して格納されています。ある香りを嗅ぐと忘れていた出来事や、その場面を思い出すという経験があるでしょう。

それは、香りの刺激によって、その香りと結びついた過去の出来事を大脳皮質の格納庫から引き出す作用によるものだと考えられています。

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認知機能の改善にはレモングラスが注目

では、具体的にどのような香りが脳を活性化させ、認知症の予防・改善に役立つのでしょうか。

注目は、イネ科の「レモングラス」の香りです。レモングラスの香りは、フレグランスウォーターを使った調査でも、認知症の予防・改善の効果が認められています。

一つ目の調査では、介護老人保健施設の入居者27名を対象に、施設の食堂の壁に超音波式の加湿器を設置し、レモングラスのフレグランスウォーターを散布しました。

GBSスケール(認知症の評価尺度)を用いて、調査開始時と8週間後の中間評価を行ったところ、アルツハイマー型の認知症と診断されていた5名について、GBSスケールの「知的機能評価」で改善傾向が見られました。

また、認知症の要介護者25年を対象としたもうひとつの調査では、レモングラスと「ベルガモット」の精油を用いて、日中に2時間程度の芳香浴を行い、12時週間後に認知機能の評価を行いました。

結果は、特に精神症状や不眠などの認知症の周辺症状が緩和された他、各種の認知症状の改善が確認されました。

このような、香りによる脳への刺激が、認知症の進行を抑制し、認知機能の向上に役立つことについては、多くの研究者が注目し、研究を進めています。

様々な匂いを嗅いで嗅覚を鍛えれば、気持ちが安定するだけでなく、嗅覚の向上に伴って脳を活性化し、認知機能が高まることが期待できるでしょう。

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